仮想通貨の分離課税は認められるのか?税制改正のメリットを解説

仮想通貨の分離課税は認められるのか?税制改正のメリットを解説

暗号資産(仮想通貨)は現状、総合課税方式がとられていますが、株式やFXと同じく分離課税で取り扱われるよう改正を求める動きが全国各地で広がっています。

ではなぜ、税制改正が期待されているのでしょうか。
本記事では、仮想通貨の税制に関する基礎知識や、分離課税に税制改正するメリットについて初心者にもわかりやすく解説します。

目次

仮想通貨で稼いだ所得は「総合課税」

仮想通貨取引で稼いだ所得は2024年10月現在、税法上の「雑所得」に分類されます。
また、雑所得は「総合課税」に区分されています。

総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算するというものです。

引用:国税庁 No.2220 総合課税制度

総合課税の対象となる各種所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得をさし、納税額は以下の通りです。

課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円
引用:国税庁 No.2260 所得税の税率

上記の表からも分かるように、所得が多くなるほど税率は高くなるのがこの課税方式の特徴です。
これは「累進課税」と呼ばれています。

現状は仮想通貨も総合課税に分類されるので、例えば仮想通貨での利益が少なくても他の所得が多ければ、高い税率が採用されてしまいます。

仮想通貨が「分離課税」になったら…

所得税には「総合課税」のほかに、「分離課税」という課税方式があります。
分離課税とは、特定の所得に対して個別に課税する方法で、仮想通貨に関しても導入が期待されています。

総合課税と分離課税の違い
  • 総合課税は、対象の所得合計に対して課税する方法
  • 分離課税は、特定の所得に対して課税する方法

分離課税を採用している所得としては、例えば退職金があります。受け取った退職金に対して税率を計算して、納税する仕組みです。

投資に目を向けると、現在、仮想通貨は総合課税が採用されています。
一方で株式投資、投資信託、FXで稼いだ利益は分離課税が適用されているため、仮想通貨だけ例外的な取り扱いとなっています。

では、分離課税のメリットとデメリットを確認してみましょう。

分離課税のメリット

分離課税のメリットは、税額を抑えられることです。
分離課税の税率は固定されているので、所得に関係なく「20.315%」が採用されます。

総合課税では所得合計が695万円以上で税率「23%」が採用されるため、分離課税の税率を超えてしまいます。

今後、仮想通貨が分離課税となれば、収入が695万円以上の人は、税金を節約できるメリットとなるでしょう。

分離課税のデメリット

分離課税には以下のようなデメリットも存在します。

  • 合計所得が低いと税率が高くなる
  • 損益通算がしにくい

合計所得が低いと税率が高くなる

前述したように、所得合計695万円以上の人が分離課税のメリットを享受できる一方、695万円未満の人は分離課税になることで税率が上がってしまいます。

損益通算がしにくい

損益通算とは、利益と損失を通算して、課税所得を減らせる制度です。
総合課税では4つの所得(譲渡所得、事業所得、不動産所得、山林所得)で損益通算できる一方で、分離課税は他の所得とは損益通算できず、株式など特定の分野のなかでしか損益通算が認められていません。

仮想通貨が「分離課税」に税制される可能性は

では実際に、総合課税の仮想通貨が、分離課税に税制されることはあるのでしょうか。
実は2024年の今年、仮想通貨関連の2つの団体より以下の要望書が関係省庁へ提出されました。

税制改正の要望書
  • 日本ブロックチェーン協会(JBA)は7月19日、「暗号資産に関する税制改正の要望書」を提出。
  • 日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は7月30日、「2025年度税制改正に関する要望書」を提出。

仮想通貨に関する所得税に関して、現行の総合課税から申告分離課税に税制改正されれば、個人投資家の仮想通貨取引を後押しする流れとなるでしょう。

なお、提出された要望書は以下の流れで法改正に向かっていきます。

  • 各省庁が財務省と総務省に提出。
  • 与党(自民党)の税制調査会によって審議し、「税制改正の大綱」を作成、年末に閣議決定される。
  • 財務相、総務省が改正法案を作成し、国会審議で審議される。

法案が通れば2025年から新しい税制が適用される可能性もあります。

まとめ

今回は、仮想通貨の税制に関する基礎知識や、分離課税に税制改正するメリットについて初心者にもわかりやすく解説しました。

仮想通貨関連の2つの団体から税制改正の要望書が各省庁へ提出されましたが、国民民主党代表の玉木氏も以下のような投稿をされています。

FXも総合課税から申告分離課税に改正された過去があることから、仮想通貨の税制改正にも注目していきましょう。

仮想通貨の分離課税は認められるのか?税制改正のメリットを解説

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